戦後の新しい日本で維持されてきた平和と民主主義、基本的人権が、一時の政権、安倍政権によって破壊されようとしている今、国民の世論で何としても食い止めなければなりません。日本の歴史にまたぞろ汚点を残すようなことがあっては、後世の人たちに申し訳が立ちません。
鳥取県内でも、良識ある著名人が、秘密保護法反対のアピールを出されました。そして、賛同を募っています。私もさっそく賛同を寄せました。
その全文を紹介します。長いですが、読んでください。
【特定秘密保護法の制定に反対する鳥取アピール】
鳥取県民のみなさん。
安倍晋三内閣は、特定秘密保護法案を今臨時国会で成立させようと躍起になっています。この法案に対しては、日本弁護士連合会はじめ法曹団体、憲法・メディア法や刑事法の研究者、文化・平和・労働・市民活動団体などが次々に反対の意見書や声明を発表しています。新聞などの世論調査でも反対意見が50%を超えています。なぜでしょうか。それは、この法案が国民の目・耳・口をふさぎ、憲法と国民の基本的人権を根底から崩すきわめて危険な内容を持っているからです。
この法案では、①防衛②外交③スパイ活動防止④テロ活動防止―の4分野の情報を「特定秘密」に指定することができます。指定できる項目は合わせて23ですが範囲は極めて広くて曖昧で、その件数は41万件にのぼるとされています。指定するのは大臣や警察庁長官などの「行政機関の長」です。しかし膨大な件数から見ても、実際には官僚が指定することになるでしょう。
「特定秘密」を扱う者は、その情報を外に漏らしてはならない。情報機関や国民は、それを知ろうとしてはならない。情報を漏らしたり入手しようとしたりすれば最高刑10年の懲役という厳罰に処す、というのです。しかも、恐ろしいことに「何が秘密か」自体が「秘密」なのです。
この「特定秘密」を取り扱う公務員や国から委託された事業者に雇用される従業者には、厳重な「適性評価」が行われます。本人だけでなく家族や交際相手なども調べられ、プライバシーは丸裸にされます。
民主主義社会を支えるのは情報です。憲法の理念に沿って、国民の強い要求で実現した情報公開法(2001年)と公文書管理法(2011年)の制定は、「公文書は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」(公文書管理法)との理念によるものです。国民は必要な情報を必要な時に手に入れて、互いに活発な意見を交わし、国の政治のあり方を最終的に判断、決定するのです。
この法案が成立したら、どのような社会になるのでしょうか。行政機関は大量の情報を恣意的に特定秘密に指定し、政府にとって「不都合な真実」は国民の目から隠蔽するでしょう。
まず、国民の知る権利の基盤となっている報道機関への影響です。これまでのような調査報道は、難しくなります。厳罰を恐れて公務員は取材に応じなくなります。特定秘密に迫ること自体が処罰の対象ですから、ジャーナリストも委縮してしまいかねません。憲法が保障する取材・報道の自由が制約されるのです。
国権の最高機関である国会の権能をも侵します。国政調査権は特定秘密の壁に遮られます。国会議員が秘密会で得た情報を所属政党に持ち帰って検討することはできません。これでは外交や防衛に関する政党としての方針決定ができません。
国民も例外ではありません。たとえば原発事故や基地問題。国民の大きな関心事ですが、情報を得ようとすると、刑事罰が待ち受けます。共謀、そそのかし、扇動行為でも最高で懲役5年、未遂でも処罰されます。仮に逮捕・起訴されて裁判になっても、なぜ起訴されたのかも明らかにされないまま有罪にされる可能性さえあります。
将来に向けても禍根を残します。外交や安全保障に関する情報は「特定秘密」のベールに包まれたまま闇に葬られる恐れがあります。これでは、時の政府の判断が正しかったのか、後世の世代が検証できません。政治家や官僚が歴史の断面を記録に残す著作も制約を受けます。学者による政治家などからの聞き取り作業(オーラル・ヒストリー)もできなくなるでしょう。
この法案成立後に出来上がる社会は、まるで戦前の社会の再来になるでしょう。国民は政府が教えてくれることだけを知ればいい。余計なことを知ろうとするな。そこには、国民主権も国民の知る権利もありません。偶然知り得た情報が特定秘密だったら、突然捕まる恐れがあります。いたるところに特定秘密という“地雷”が埋め込まれた空恐ろしい社会になってしまいます。
このように、この法案は日本社会全体を恐怖と不安に陥れ、秘密警察・情報保全隊(自衛隊の)を含む行政機関の情報支配、国民支配の道具にされます。国民の基本的人権のみならず、立法権、司法権をも突き崩す戦後最大の悪法です。
特定秘密保護法が国家安全保障会議(日本版NSC) 設置法案とセットになっていることも見逃せません。国家安全保障会議が有効に機能するよう、アメリカからの情報提供が受けやすくするため、秘密にする情報の範囲を拡大し、罰も重くして情報漏出を防止しようというのが、法案のねらいです。もちろん、自民党が昨年4月に発表した改憲草案とも連動しています。憲法が定める民主的な秩序を根底からくつがえし、アメリカに追随して海外で「戦争をする国」づくりをめざす安倍政権の野望が透けて見えます。ここにこそ、法の必要性も不明確なまま、提案の趣旨説明から1カ月にも満たない短期間で成立を目指す安倍首相の真意があります。法案の修正協議が始まりましたが、法案の手直しで危険性がなくなるような代物ではありません。
それだけに、思想・信条、政党政派、宗教宗派の違いを超えて、日本の民主主義を守るという共通の目標に向かって手を結び、この悪法の成立を阻止し、廃案に追い込むことがきわめて重要です。
そのために声を上げましょう。そして、そのために一人でも多くの方がこの「アピール」に賛同してくださるよう、鳥取県民のみなさんに心から強く訴えます。
以上
《呼びかけ人》 ◎代表 *事務局
綾木 歳一(長崎県立大学名誉教授、鳥取市) 石田 正義(鳥取短期大学名誉教授、日野郡日南町) 伊藤 英司(岡山大学名誉教授、東伯郡三朝町) 岩本 泰蔵(元高校教諭、境港市) 加藤 俊行(元牧師、米子市) 角秋 勝治(評論家、鳥取市) 金澤 瑞子(元倉吉文化団体協議会会長、倉吉市) 沢田 欣子(主婦、米子市) 柴原 イネ(獣医師、米子市) 須崎 俊雄(鳥取文芸協会会長、鳥取市) 砂口三千子(元県職員、米子市) 千石 知芳 (浄土真宗・畢竟(ひつきょう)院僧侶、鳥取市) ◎高多 彬臣(前鳥取県図書館協会会長、倉吉市) 高橋 敬幸(弁護士、米子市) ◎田中 久大(元日本海新聞編集局長、鳥取市) 田中 文也(古代史研究家、境港市) 手塚 智子(えねみら・とっとり(エネルギーの未来を考える会)共同代表、鳥取市) 土光 均 (さよなら島根原発ネットワーク共同代表、米子市) ◎永井 章 (陸軍士官学校第61期生、元昭和電工㈱理事、境港市) *浜田 章作(元鳥取短期大学助教授、境港市) 廣澤虔一郎(「米子文学」同人、米子市) 福島多暉夫(写真家、米子写真家協会会長、米子市) ◎藤田 安一(鳥取大学教授、鳥取市) 本間 弘次(岡山大学名誉教授、東伯郡三朝町) 松本 薫 (作家、米子市) 松本 拾 (開業医、米子市) 宮本 亀麿(元山陰放送アナウンサー、前要約筆記の会「虹」代表、米子市) 村上 俊夫 (元日本海新聞論説委員長、鳥取市) ◎安田 寿朗(弁護士、米子市) 山添 英明(元日本海新聞販売局長、鳥取市) 山中 幸子 (えねみら・とっとり(エネルギーの未来を考える会)共同代表、鳥取市) 吉田 廉士(興雲寺住職、八頭郡智頭町) 吉野 立 (NPO法人地域福祉ネット副理事長、米子市) (50音順、敬称略 11月19日現在)
連絡先: 境港市麦垣町12-1 浜田 章作
(TEL&FAX・ 0859 -45-3422 携帯・090-3379-1791) e-mail hamada.shosaku@orchid.plala.or.jp